『 空の大怪獣ラドン 』 (英題:Rodan) は、1956年12月26日より東宝配給にて公開された日本映画。
阿蘇付近の炭鉱で目覚めた大怪獣ラドンと人類の攻防を描く怪獣パニック。
原作は、推理作家・ミステリ翻訳家・SF作家としても活躍した、日本におけるオカルト・ライターの草分けである黒沼健。
監督は「ゴジラ (1954)」「大怪獣バラン (1958)」「モスラ (1961)」「モスラ対ゴジラ (1964)」「怪獣大戦争 (1965)」「ゲゾラ・ガニメ・カメーバ 決戦!南海の大怪獣 (1970)」特撮TV「帰ってきたウルトラマン (1971~1972)」「メカゴジラの逆襲 (1975)」の本多猪四郎。
脚本は「ゴジラ (1954)」「獣人雪男 (1955)」「ゴジラの逆襲 (1955)」「怪獣王ゴジラ (1956)」「囚人船 (1956)」「脱獄囚 (1957)」「孫悟空 (1959)」の村田武雄と、「さらばラバウル (1954)」「地球防衛軍 (1957)」「美女と液体人間 (1958)」「ガス人間第1号 (1960)」「妖星ゴラス (1962)」「マタンゴ (1963)」「士魂魔道 大龍巻 (1964)」の木村武の共同。
撮影は「青い果実 (1955)」「ますらを派出夫会 (1956)」「次郎長意外伝 大暴れ三太郎笠 (1957)」「夜の鴎 (1957)」「善太と三平物語 お化けの世界 (1957)」「ジャズ娘に栄光あれ (1958)」「こだまは呼んでいる (1959)」の芦田勇。
音楽は「ゴジラ (1954)」「大怪獣バラン (1958)」「キングコング対ゴジラ (1962)」「メカゴジラの逆襲 (1975)」「ゴジラVSビオランテ (1989)」「ゴジラVSキングギドラ (1991)」「ゴジラVSモスラ (1992)」「ゴジラVSメカゴジラ (1993)」「ゴジラVSデストロイア (1995)」の伊福部昭。
出演は「制服の乙女たち (1955)」「美女と液体人間 (1958)」「モスラ (1961)」特撮TV「ウルトラQ (1966)」特撮TV「ウルトラセブン (1967~1968)」「メカゴジラの逆襲 (1975)」「ゴジラVSスペースゴジラ (1994)」「ゴジラ FINAL WARS (2004)」「世界のどこにでもある、場所 (2010)」の佐原健二(石原忠)、「ゴジラ (1954)」「大怪獣バラン (1958)」「モスラ (1961)」特撮TV「ウルトラマン 空想特撮シリーズ (1966~1967)」「ゴジラ対メカゴジラ (1974)」「さよならジュピター (1984)」「甦れ!ウルトラマン (1996)」の平田昭彦、「地球防衛軍 (1957)」「美女と液体人間 (1958)」「電送人間 (1960)」「妖星ゴラス (1962)」TVドラマ「家族ゲーム (1983)」TVドラマ「ハケンの品格 (2006)」TVドラマ「家政婦のミタ (2011)」の白川由美、「恐怖の逃亡 (1956)」「裸の大将 (1958)」「弥次喜多道中記 (1958)」「四谷怪談 (1959)」「怪談累が渕(かさねがふち) (1960)」「化身 (1962)」「アスファルト・ガール (1964)」の中田康子など。
同時上映は、監督・日高繁明作/主演・鶴田浩二の「眠狂四郎無頼控」。【 ストーリー 】
阿蘇付近の炭鉱で、出水事故が発生。
それに続いて炭鉱夫らが水中に引き込まれ、惨殺死体となって発見される殺人事件が相次いだ。
やがて出現した犯人は、古代トンボの幼虫・メガヌロンだった。
警官と共にメガヌロンを追って、坑道に入った炭鉱技師河村繁は落盤に巻き込まれ姿を消す。
やがて、地震で出来た陥没口から河村は発見され救出されるが、記憶喪失となっていた。
時を同じくして、航空隊司令部に国籍不明の超音速機が報告された。
国籍不明機は、さらに東アジア各地にも出現した。
一方、阿蘇高原では家畜の行方不明が相次ぎ、散策していたカップルが行方不明になる事件が起きた。彼らが残したカメラのフィルムには、鳥の翼のような謎の影が映っていた。
恋人キヨの懸命の看護により、河村は文鳥の卵の孵化を見たことをきっかけに、失われていた記憶を取り戻した。
彼は、地底の大空洞でメガヌロンをついばむ巨大な生物を見たのだ。
柏木久一郎博士の調査団に同行して阿蘇に赴いた河村の眼前で、古代翼竜ラドンがはばたいた。
知らせを受けて発進した防衛隊のF-86Fセイバー戦闘機の追撃を受け、ラドンは佐世保の西海橋付近に一時は墜落したが再びはばたき、佐世保や福岡を襲撃した。
特車隊が応戦するものの、さらにもう1頭が出現して街を蹂躙。いずこともなく姿を消した。
帰巣本能で阿蘇にもどるのではないか、という柏木博士の予測どおり、ラドンは阿蘇火口の大空洞に所在を確認された。
火山研究所が噴火の危険を警告する中、住民の避難が進められ、防衛隊の攻撃が始まる・・・。
【 余談 】
・ 『東宝特撮映画全史』(東宝出版刊)での田中友幸と小松左京の対談によれば、当作の検討台本に対しては、黒澤明も助言をしたとのことで、黒澤の意見は「等身大のメガヌロンと巨大なラドンとの大きさの対比」や「季節感」など、細かい部分でかなり脚本に採り入れられたという。
・ 阿蘇地方の炭鉱からラドンが生まれるという設定であるが、実際には阿蘇に炭鉱は存在せず、映画のロケは長崎県北松浦郡鹿町町の炭鉱で行われた。
・ ラドンに破壊され、崩れ落ちるビルの中で人が逃げているという場面があるが、後年に「鏡をミニチュアのビルの中に置き、人物を映す」という方法で撮影されたことが判明した。
1996年に公開された平成ガメラシリーズ第2作『ガメラ2 レギオン襲来』では、仙台駅前のビルが崩れ落ちる場面でオマージュ的意味合いも込めてこの方法を取り入れている。
また、この手法は1984年に公開されたゴジラシリーズ第16作『ゴジラ』のスーパーXの窓やマルシンハンバーグの巨人のCMなどでも使われている。
・ ラストシーンの阿蘇山噴火では、当初ラドンは死なず、噴火する阿蘇山上空を2匹のラドンが弧を描いたまま飛ぶシーンで終わる予定だった。
だが、溶かした鉄を溶岩に見立てたため撮影現場は高熱に包まれ、その熱は本番中にラドンを吊っていたピアノ線を焼き切ってしまい、操演不能になった。
しかし特技監督の円谷英二は操演スタッフのアドリブだと思ったため、撮影の有川貞昌らに「まだキャメラを止めるな!」と叫んで撮影を続けさせた(撮影終了後に操演スタッフから事情を聞いたが撮り直しはしないことに決定した)。
結果的に、本当に力尽きたかのように見えるラストシーンとなった。
このアクシデントについて、ピアノ線が切れたのを見た円谷が「この状態なら本当にラドンが苦しんで見えるはずだ」と瞬時に判断し、中断しかけた撮影を続行させたというのは、厳密には間違いである。
西海橋や岩田屋のシーンでは、ラドンのぬいぐるみ(着ぐるみ)ごと中島春雄をピアノ線で吊り下げ、危険なワイヤーアクションを使用して撮影されており、映画界での使用としては最初期と見られる。
また、ピアノ線による操作で画期的だったのが、自衛隊機の表現である。
『ゴジラ』では黒い幕を背景にして固定された状態のミニチュア機から火薬を仕込んだロケット弾を発射させていたが、本作では真昼の青空を背景にしてピアノ線で操作されたミニチュア機からロケット弾が発射されていた。
この様な「ミニチュアを飛ばしながら発砲させる」という表現は「発砲時の反動でミニチュアが揺れてしまう」というアクシデントを起こし易いのだが、それを最小限に抑える為、円谷はミニチュアの機首部、左右の主翼付け根、翼端、尾部など、複数個所に様々な角度からピアノ線を張って操作するという、より高度で複雑な技術を考案して撮影に臨んだ。
この優れたピアノ線操作が「自衛隊機が西海橋のアーチの下をくぐり抜ける」という名場面を産むことにもなる。
・ 自衛隊機がラドンを追うシーン、「ラドン追撃せよ」として使用された曲は本作の音楽を担当した伊福部昭が初めて映画音楽を手がけた作品である『銀嶺の果て』のメインタイトルをアレンジしたものである。
この曲は後に『ゴジラvsキングギドラ』でも自衛隊のF-15戦闘機がキングギドラを追うシーンで使用されている。
【 スタッフ 】
監督 : 本多猪四郎
原作 : 黒沼健
脚本 : 村田武雄 、木村武 (馬淵薫)
製作 : 小林一三
プロデューサー : 田中友幸
エグゼクティブプロデューサー : 森岩雄
撮影監督 : 芦田勇
撮影 : 有川貞昌 、富岡素敬 、真野田陽一
美術 : 北辰雄
録音 : 宮崎正信
照明 : 森茂
音楽 : 伊福部昭
特技監督 : 円谷英二
光学撮影 : 荒木秀三郎
美術 : 渡辺明
美術助手 : 井上泰幸 、入江義夫
照明 : 城田正雄
合成 : 向山宏
火薬 : 山本久蔵
造形チーフ : 利光貞三
特殊機械 (操演) : 中代文雄 、鈴木昶
監督助手 (特撮チーフ) : 浅井正勝
監督助手 (本編チーフ) : 福田純
監督助手 : 山本迪夫
編集 : 岩下広一
音響効果 : 三縄一郎
現像 : 東洋現像所
製作担当 : 眞木照夫 、坂本泰明
スチール : 土屋次郎
【 キャスト 】
河村繁 (炭坑技師) : 佐原健二
キヨ (炭坑事務員 / 五郎の妹) : 白川由美
西村警部 : 小堀明男
柏木久一郎博士 (古生物学者) : 平田昭彦
南教授 (物理学者) : 村上冬樹
大崎 (炭坑所長) : 山田巳之助
井関 (西部新聞記者) : 田島義文
お民 (由造の妻) : 水の也清美
葉山助教授 : 松尾文人
捨やん (坑夫) : 如月寛多
須田 (炭坑技師長) : 草間璋夫
常さん (坑夫) : 河崎堅男
水上医師 : 高木清
航空自衛隊司令 : 三原秀夫
砂川 (地震研究所技師) : 今泉廉
仙吉 (坑夫) : 中谷一郎
アベックの若い男・中川 (砂川の友人) : 大仲清二 (大仲清治)
アベックの若い女 : 中田康子
由造 (炭坑夫) : 鈴川二郎
五郎 (キヨの兄 / 炭坑夫) : 緒方燐作
多平 (炭坑夫) : 榊田敬二
田代巡査 : 熊谷二良
警察署長 : 千葉一郎
防衛隊幹部 : 向井淳一郎
武内 (航空自衛隊幕僚) : 津田光男
石川 (地震研究所技師) : 今泉廉
地震研究所研究員 : 門脇三郎
お澄 : 馬野都留子
はる : 一万慈鶴恵
炭坑の女 : 中野俊子
看護婦 : 黒岩小枝子
パイロット / メガヌロン : 広瀬正一
炭坑職員 : 勝本圭一郎
磯川教授 : 松本光男
新聞記者A : 宇野晃司
新聞記者B : 岡部正
北原 (パイロット) : 岡豊
パイロット : 山田彰
パイロット : 砂川繁視
農夫 : 平凡太郎
警官 : 橘正晃
検死官 : 須田準之助
サブ (炭坑夫) : 重信安宏
今村 (パイロット) : 堤康久
ホテル支配人 / メガヌロン : 手塚克巳
ラドン / メガヌロン / 防衛隊幹部 : 中島春雄
メガヌロン / 炭坑夫 : 大川時生
炭坑夫 : 日方一夫
炭坑夫 : 吉田新
炭坑夫 : 海上日出男
炭坑夫 : 成田孝
炭坑夫 : 坂本晴哉
炭坑夫 : 仙石正夫
炭坑夫 : 小野実
炭坑夫 : 光秋次郎
第一攻撃部隊通信員 : 鈴木孝次 (鈴木俊継)
牛を盗まれた農夫 : 大西康雅
鑑識課員 / 防衛隊幹部 : 坪野鎌之
防衛会議出席者 : 福田和郎
車乗口から出てくる坑夫 : 澁谷英男 (渋谷英男)
人車乗場の炭坑職員 : 鈴木治夫
柏木博士の助手 : 茨田正夫
航空自衛隊隊員 : 岩本弘司
警官 : 越後憲三
炭坑職員 : 河辺昌義
アナウンサー : 池谷三郎
特車隊長 : 山本廉
炭坑の女 : 小野松枝
炭坑の男 : 大塚秀男
炭坑職員 : 天見竜太郎 、池田兼男 、今井和雄 、吉頂寺晃 、夏木順平 、松下正秀
記者 : 安芸津広 、清水良二 、帯一郎 、中西英介
医師 : 川又吉一
防衛隊幹部 / 炭坑入坑口の係員 : 宇留木耕嗣
航空自衛隊隊員 : 小松英三郎
自衛隊通信員 : 勝部義夫
自衛隊員 : 伊原徳 、上村幸之
警官 : 川村郁夫 、細川隆一
沖縄の通信員 : マイク・ダニーン
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