世紀末救世主伝説北斗の拳（1986）　～　邦画　ＳＦ・アクション・アニメ　～

『世紀末救世主伝説北斗の拳』は、1986年3月8日より東映配給にて公開された日本のアニメ映画。
核戦争によって文明と人々の秩序が失われ、水と食料といった残された資源をめぐって争いが繰り返されるという最終戦争後の199X年を舞台に、暴力が支配する弱肉強食の世界に現れた、伝説の暗殺拳"北斗神拳"の伝承者・ケンシロウの生き様を描くハードボイルドアクション。
TVアニメシリーズと同一のタイトルで公開された初の劇場版であり、原作におけるケンシロウとラオウの最初の対決までを劇場用に再構成し全編新作で制作された劇場用オリジナル長編。
原作は、「週刊少年ジャンプ」（集英社）にて1983年31号～1988年35号まで連載された作画・原哲夫、原作・武論尊による漫画作品「北斗の拳」。
監督は、TVアニメ「ムーミン (1969～1970)」TVアニメ「宇宙戦艦ヤマト (1974～1975)」TVアニメ「タイムボカンシリーズ　ヤッターマン (1977～1978)」などの作画監督や「Ｄｒ．スランプ　アラレちゃん　ほよよ！夢の都メカポリス (1985)」「吸血鬼ハンターＤ (1985)」「恐怖のバイオ人間　最終教師 (1988)」「Ｐｉｎｋ　みずドロボウあめドロボウ (1990)」の監督、TVアニメ「成恵の世界 (2003)」TVアニメ「蒼天航路 (2009)」の総監督を務めるなど、多くのアニメ作品を送り出してきた芦田豊雄。
脚本は、TVアニメ「ゲゲゲの鬼太郎 (1968)」TVアニメ「デビルマン (1972～1973)」TVアニメ「マジンガーＺ (1972～1974)」TVアニメ「キューティーハニー (1973)」TVアニメ「グレートマジンガー (1974～1975)」TVアニメ「ゲッターロボＧ (1975～1976)」TVアニメ「魁!!男塾 (1988)」の高久進。
撮影監督は「タイガーマスク　ふく面リーグ戦 (1970)」「世界名作童話　白鳥の王子 (1977)」「夏への扉 (1981)」OVA「エンジェル伝説 (1996)」「Ｃｏｏ　遠い海から来たクー (1993)」「金田一少年の事件簿２　殺戮のディープブルー (1999)」の撮影や、「世界名作童話　森は生きている (1980)」「１０００年女王 (1982)」OVA[湘南爆走族６　ＧＴ３８０ヒストリー (1990)」「銀河鉄道９９９　エターナル・ファンタジー (1998)」の撮影監督を務める細田民男。
音楽は、TVアニメ「トム・ソーヤーの冒険 (1980)」TVアニメ「瞳のなかの少年　１５少年漂流記 (1987)」TVアニメ「無限のリヴァイアス (1999)」OVA「星界の断章　誕生 (2000)」TVアニメ「星界の戦旗ＩＩ (2001)」OVA「星界の戦旗III (2005)」の服部克久。

【　ストーリー　】

世界が核の炎に包まれ、暴力が支配するようになった荒廃した199X年。
相手の経絡秘孔を突き、敵を内部から破壊せしめる恐るべき拳法“北斗神拳”の伝承者となったケンシロウ。
この荒廃した世界で、恋人のユリアと共に生きてゆこうとするケンシロウの前に、幼き頃より共に修業に励んだ友・・・南斗聖拳のシンが立ち塞がる。
ユリアに想いを寄せていたシンは、ケンシロウの甘さではユリアを守ることなど出来ないと考え、ケンシロウからユリアを力ずくで奪う事を選ぶ。
動揺するケンシロウに容赦ないシンの攻撃が炸裂。
ケンシロウは敗れ、ユリアを奪われてしまう。
その様子を伺う北斗4兄弟の長兄ラオウと三男ジャギ。
予てからケンシロウを疎んでいたジャギは、倒れたケンシロウを谷底に投げ入れる。
一方、伝承者の道を断たれたラオウは、天を掴むという己の野望の為、師父リュウケンを倒し覇王・拳王となって旅立つのだった。
時は流れ、世界は暴力の支配する暗黒の時代を迎えていた。
力こそ正義・・・少ない水と食料を求め、暴徒たちが村や人々を襲っていた。
そんな中に、まだ幼さ残る少年バットと、言葉を無くした少女リンがいた。
リンが暴徒に捕まり、絶体絶命となった時、リンの心の声が、ケンシロウの心を揺さぶり起こす。
この瞬間より、北斗救世主伝説が始まる・・・。

【　余談　】

・　テレビ版ではシルエットや透過光によって緩和されていた人体破裂の描写などが映画版では過激なスプラッタ描写で描かれている。
製作スタッフもパンフレットにおいて「アニメ界初のスプラッター・ムービーとはこの映画のこと」と語り、バイオレンス描写に力を入れて作画していたことを明かしていた。
原作者である武論尊が劇場版のオリジナルストーリーを依頼されていることが『週刊少年ジャンプ』の特集で公表され、巻末の作者コメント欄でも当初は絵コンテを見たうえで「いい作品になりそうだよ」と発言している。
しかし公開が迫るにつれ、同コメント欄で3週にわたってこの映画についての発言が厳しいものとなり、「漫画と映画は別物」（1986年14号）「映画は別のドラマと思ってほしいナ」（1986年15号）と述べ、16号では「映画は暴力のみを強調しているらしい。残念だ!」と過激なバイオレンス描写を批判するに至っている。
尚、パチンコ・パチスロメーカーであるSAMMYからパチンコ台やパチスロが販売されたが、アニメーション演出において血の色が赤ではなく黄色などの配色がなされているのは、原作者や集英社側の意向を尊重したものと思われる。

・　ラオウとケンシロウの初対決が描かれた当時の漫画連載では、まだユリアが南斗最後の将とは明かされていなかったが、公開直前の時点ではそれが判明しているなど、その後の展開を踏まえたものとなっており「南斗の血をひく女」であることがシンの台詞で明かされている。
リンについても、北斗・南斗・元斗を従える王者の星を宿星とする天帝の双子の妹だった、というその後の天帝編に呼応するような設定が暗に示されており、クライマックスではケンシロウがラオウに敗れ、まさにラオウがとどめを刺そうとする瞬間にリンが戦いを制止し、「拳王は地に膝など着かぬ」と叫んだラオウがリンの前に跪いて彼女の忠告を受け入れて去るという展開で終了するなど、その存在の大きさが窺える演出がなされていた。
これらの方針は、東映が『銀河鉄道999』劇場版を製作した際、原作漫画が連載中かつテレビシリーズが続行中であるにもかかわらず、メーテルの正体や終着駅など謎の真相を明かし、結果として興業成績が良かったことを踏まえたものである。
しかし、このケンシロウが敗北するラストは、映画続編が製作されない事が決定し、1987年末にビデオソフト化が発表され小売店にポスターが貼り出されたものの、結末を変更する為、発売日を延期するにいたった。
1988年のビデオソフト化に際して、ケンシロウとラオウは両者互角のまま、互いに今まさに最後の一撃を放たんという瞬間にリンが制止、ラオウがこれを聞き入れて去るという展開で新たに新作カットが制作され差し替えられた。
このシーンでは映画音楽を担当した服部克久・作曲の「ル・ローヌ」が使用された。
またエンドロールの最後にも黒バックに「完」の一文字のカットが付け加えられ、差替え部分の作画に当たった須田正己の名が、エンドクレジットの「原画」欄にも追加された。
オリジナル劇場公開版は日本国内では未だソフトメディア化されていないが、北米でソフト化されているものは改訂前のバージョンで収録され発売されている。
一方、改訂されたバージョンも88年にビデオソフト化、1995年にLD化されて以降はスカイパーフェクTV!で数度放送されたものの現在まで地上波TV放送はされておらず、またDVDも日本国内では未発売であるなど視聴が難しかったが、2008年11月21日にリリースされている。
尚、このDVDは初回生産版のみ特典映像として劇場公開版マルチエンディング仕様となっているが、現存する素材をもとに収録している為、本編最終部分の約4分間はHDリマスター化しておらず画面の上下に黒帯が入っている。

【　スタッフ　】

監督：　芦田豊雄
原作：　武論尊、原哲夫　『北斗の拳』（集英社刊）
企画：　有賀健、高見義雄
脚本：　高久進
製作総指揮：　今田智憲
作画監督：　須田正己
美術監督：　田中資幸
撮影監督：　細田民男
編集：　花井正明
音楽：　服部克久

【　主題歌　】

・　エンディングテーマ

『　Purple Eyes　』

作詞・作曲・編曲：うじきつよし　　歌：KODOMO BAND

・　挿入歌

『　Heart of Madness　』

作詞・作曲・編曲：うじきつよし　　歌：KODOMO BAND

【　キャスト　】

ケンシロウ：　神谷明
ユリア：　山本百合子
拳王（ラオウ）：　内海賢二
ジャギ：　大塚周夫
シン：　古川登志夫
レイ：　塩沢兼人
リン：　鈴木富子
バット：　鈴木みえ
アイリ：　安藤ありさ
リュウケン：　千葉順二
ジード：　柴田秀勝
ハート：　滝口順平
フォックス：　青野武
ジャッカル：　大竹宏
ウイグル：　郷里大輔
牙大王：　渡部猛
ガルフ：　八奈見乗児
長老：　宮内幸平
カーネル：　矢田耕司
十字剣双節棍：　屋良有作
ノコザコ：　千葉繁
Z一味：　銀河万丈
Z一味：　田中亮一
老婆：　鈴木れい子
加藤正之
川浪葉子
佐藤正治
沢木郁也
塩屋浩三
小林通孝
田中康郎
ナレーション：　石田弦太郎